大判例

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東京地方裁判所 昭和35年(ワ)3349号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は昭和三〇年九月一日本件家屋を被告中山に対し賃料一カ月一二、〇〇〇円、三カ月分以上前払とし毎支払月の三〇日までに持参支払うとの約定で賃貸した。そして原告は、本件賃貸借は一時使用の目的で期間を一年と定めたのであるから、昭和三一年八月三一日期間満了によつて終了した。また被告中山は昭和三五年二月から同年四月までの約定賃料を支払わないばかりでなく、原告に無断で本件家屋を被告常磐建設株式会社に転貸しているから、本件訴状をもつて右賃料不払および無断転貸を理由として賃貸借契約解除の意思表示をすると主張し、本件家屋の明渡の損害金の支払を求めた。右無断転貸の主張に対しては、被告は後記判示のような事実を主張して、本件家屋の占有使用の状況からみて被告会社の使用関係をもつて転貸となすには当らない、仮りに転貸と認められるとしても、賃借人としての背信行為には当らないから解除権の濫用というべきであると抗争した。

判決は、右無断転貸の有無について次のような事実を認定し、本件は転貸に当らないと判示した。曰く、

「本件被告中山の賃借家屋を被告会社が同被告とともに使用占有していることは当事者の間に争がないところ、……を併せ考えると、被告会社は被告中山忠義が官庁入札の資格獲得と課税軽減の目的で、自己の営む建築および土木工事施工営業を会社組織に改めるため、昭和三四年八月三一日右と同一の営業を目的として設立した会社であつて、同被告の住所を本店所在地とし同人自ら代表取締役となり、在学中である妻の弟および知人を取締役とし妻を監査役とし、その営業上の実権は同被告が一手に掌握しており、営業の実体においては個人営業であつた当時と全く変りはないこと、従つて、これを右家屋使用の状況から見ても本件係争家屋には依然として被告中山の一家族が居住しており、表入口に被告会社の看板が掲げられたのみで、その他の点においては被告中山が個人で営業していた当時と占有状況に何等の変りもなく、同被告が本件家屋を退去する場合には、当然、被告会社もこれとともに家屋を退去する関係にあることを認めるに十分である。会社は独立の法人格を有し自然人たる代表者の人格と同一視することはできないことはもとよりであるが、右に認定したような事実関係のもとにおいては、単に被告会社が本件家屋を占有しているという事実のみで被告中山がこれを転貸したとなすは当らないものというべきである。株主構成に変動を生じ、被告会社が全く第三者の支配を受けるに至ることは、予想されないことではないが、そのような事態が生じた場合にはその事態にもとづいて、更に事を判断すれば足りるのであるから、そのような状態を予測して現在の状態を判断すべきであるとする原告の主張には、にわかに賛し難いところである。以上の次第であるから、原告の無断転貸を理由とする解除の主張も理由なしとなさざるを得ない。」

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